アラビア語と英語ってどのくらい似てるの?
こういった方向けです。
本記事では、アラビア語と英語の似ている点を単語・文法・発音の観点から詳しく解説しました。さらに、語源や両言語の背景についても紹介しました。
私は英語、アラビア語、フランス語、スペイン語を話します。
この言語経験をもとにお話します。
アラビア語と英語は似てる?発音や語源、文法について徹底解説!
今回はこのようなトピックでお話していきます!
それではいきましょう!
アラビア語と英語の基本情報
アラビア語と英語ですが、結論から言うと似ている部分もあります。
これは個人的な感想ではなく、根拠があります。
まず2つの言語の背景について少し説明させてください。
これから先に少し難しい単語が出てきますが覚える必要はなく、なんとなくイメージだけ掴んでいただけたら幸いです
まず、英語とアラビア語では「語族」が違います。
英語は「インド・ヨーロッパ語族」、アラビア語は「アフロ・アジア語族」というものに分類されます。
「語族・・?」という方のために簡単に説明させていただきます。
どんな言語も語族というものに分類することができます。
語族というのは歴史や文法の特徴から、起源が同じだと考えられる言語を分類したものです。
この語族を起点として、語派・・・諸群・・というように細かいグループへと枝分かれしていきます。
しかし、アラビア語と英語は、そもそも枝分かれする前の最も大きな括りである語族が違うのです。
難しい・・・!なんでこれを知る必要があるの?
実はこの語族が近ければ近いほど、言語の特徴が似ているからなんです!
例えば、英語が属すインド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派は他にオランダ語・ドイツ語などがあります。
英語とオランダ語では発音はもちろん、文法も比較的似ています。
また、同じインド・ヨーロッパ語族でロマンス諸語に属すスペイン語やイタリア語はかなり似ているため、頑張れば意思疎通できたりします。
このように一般的に語族が同じ言語であればあるほど、似ているということができます。
なるほど!じゃあアラビア語と英語は語族が違うからかなり遠い言語なんだね。
そうなんです。
ただ、歴史上お互いに影響を受けているので、結果的に似ている部分もあります。これは次のセクションで詳しくお話します。
ここでは、アラビア語と英語は語族、つまり言語の系統が違うということだけ覚えておいてください。
単語の似ている点や違い
まずはアラビア語と英語の単語についてお話します。
結論から言うと、アラビア語からの借用語が多くあります。
というのも、8世紀にムーア人と呼ばれるイスラム教徒がイベリア半島(今のスペインやポルトガルの位置)を占領しました。これはウマイヤ朝という巨大なイスラム帝国でした。
それから何世紀か経った後、キリスト教徒がイベリア半島を取り返しましたが、その時には既にアラビア語は広く普及し多くの影響を与えていました。
そのため、スペイン語にはアラビア語を語源とした単語が数多くあります。
そして、英語はそのスペイン語などのラテン語に影響を受けているんです。
その結果、英語もアラビア語から多くの言葉を取り入れています。
それでは英単語の中から、アラビア語が語源のものをいくつかご紹介します!
意味 | 英語 | アラビア語 |
---|---|---|
アルコール | Alcohol | الكحول(アル クフル) |
レモン | Lemon | ليمون(リームーヌ) |
コーヒー | Coffee | قهوة(カフワ) |
砂糖 | Sugar | السكر(アスッカル) |
代数学 | Algebra | الجبر(アルジャバル) |
化学 | Chemistry | كيمياء(キミアーッ) |
ゼロ | Zero | صفر(スフル) |
なんとなくイメージを掴んでいただけたでしょうか?
さらに、私達が普段何気なく使っている数字は「アラビア数字」または「インド・アラビア数字」と呼ばれており、これもアラビア語からの影響を受けています。
私達は0から始まり10を基準にして数字を数えるのですが、これを10進法と言います。当たり前すぎて普段意識することはないと思いますが、数字が10になった時に値が繰り上がりますよね。
0,1,2,3,4,5,6,7,8,9からなるこの数え方は、6~7世紀にインドを起源として発明されました。つまり、それまでは「0」という概念自体がなかったのです。
この10進法の数え方は、後にイラクのバグダードを拠点にアラビア語圏に普及します。
ここで広めたのがフワーリズミーという天才数学者でした。そこでインドとアラビア両方の数え方が組み合わさってインド・アラビア数字となり、今と同じ数え方になりました。
その後はヨーロッパに徐々に普及していき、15世紀にはこのインド・アラビア数字が元々のヨーロッパの数え方に取って代わりました。
それが今日の私達の数字の数え方に繋がっているんです。面白いですよね。
アラビア語を始めてみようか迷っているあなたへ
ところで、どの言語でもそうですが初心者の時は何から始めたらいいかわからないし、言語の全体像も掴めなくて不安ですよね。
大きな書店でいくつかアラビア語の本を読んでみたのですが、ニューエクスプレスという本が入門書にぴったりだと思いました。
実はニューエクスプレスは、言語マニアの中では定評のある良書です。
文字の読み方や発音のコツをCD付きでやさしく解説しており、練習問題を重ねて最後は短い読み物に挑戦するという形式です。
文法の基礎も丁寧かつ満遍なく解説されているので、とっかかりの一冊に最適だと思います。
文法の似ている点や違い
続いては文法についてです。
結論から言うと、英語とアラビア語の文法はほとんど似ていません。むしろかなり異なります。
と言っても、アラビア語が絶対的に難しいというわけではありません。
アラビア語の方が複雑なところもあれば、アラビア語の方がシンプルなところもあります。
ここでは、アラビア語文法の特徴を簡単にご紹介します。
文法特徴1
VSOの語順をとる!
まず1つ目の特徴は、語順が特殊ということです。
英語の語順はSVOで、日本語はSOVです。
SVOとは「主語→動詞→目的語」の順で文が成り立つということです。
例えば、『He eats meat』という文章。
「彼は【主語】 /食べる【動詞】 /肉を【目的語】」で「彼は肉を食べる」という意味になるということです。
ヨーロッパの言語は、比較的SVOであることが多いです。
それに対して、アラビア語はVSOの形を取ります。つまり、動詞が最初に来るのです。
『يأكل هو اللحم』で「食べる【動詞】/彼は【主語】/肉を【目的語】」という順です。
これは、アラビア語の大きな特徴ですね。
VSOの語順をとる言語はアラビア語の他にヘブライ語やタガログ語などがあります。
補足ですが、動詞が含まれる文では主語の人称代名詞(英語のYouやHeなど)は基本的に省略されます。なぜかと言うと、動詞を見ただけで主語がわかるからです。
動詞が主語によって形が変化するのも特徴の1つですね。
ただ、動詞変化についてはスペイン語やフランス語などのラテン語よりシンプルなので安心してください。
文法特徴2
単語は3文字から成り立つ!
ほとんどのアラビア語の単語の核(語根のこと)はたった3文字なんです!この3文字が変化して動詞になったり名詞になったりします。
これがわかってくるとアラビア語の勉強が一気に楽しくなります。
例えば「書く」に関わる単語は「ك(k)」「ت(t)」「ب(b)」を核とします。
- 「書く」は『كتب(カタバ)』
- 「作家」は『كاتب(カーティブ)』
- 「事務所(書く場所)」は『مكتب(マクタブ)』
これら全て「k」「t」「b」から成り立っていますよね。
なんとなくイメージを掴んでいただけたでしょうか?
この核となる組み合わせを覚えていけば、初めて見る単語でもなんとなく意味を予測することができます。
このような点からも、アラビア語は規則に則った合理的な言語であることがわかりますよね。
文法特徴3
名詞や形容詞の形がコロコロ変わる!
アラビア語では、名詞や形容詞の形がコロコロ変わります。
これはなかなか大変な要素だと思います。
基本的に語尾が変化します。その名詞が主語かどうかなどの文中での名詞の役割によって主格・属格・対格の3つの種類に分かれます。
例えば、「朝」という単語『صباح』
- 主格になる時は『صباحٌ(サバーフン)』
- 属格になる時は『صباحٍ(サバーヒン)』
- 対格になる時は『صباحاً(サバーハン)』
こんな感じで変化するということです。
最後の文字「ح」に何か記号が付いているのが見えますでしょうか?これを見てどの名詞がどの役割を果たしているのか判断することができます。
また、上で紹介したのは「非限定」という型(英語でいうa)で、「限定」という型(英語でいうthe)ではまた少し形が変わります。
アラビア語無理そう・・・
たしかに複雑に見えるかもしれませんが、めちゃくちゃ大きく形が変わるということはないので、大丈夫です!
また、先程の名詞の語尾変化でもそうですが、アラビア語は単語に他の語を繋げることが多いのも特徴です。
例えば、『لصديقي』は、1語に見えそうですが「私の友達のために」という意味があります。
このように単語の頭と後ろに前置詞や所有格などをそのまま繋げるので、最初は見慣れないかもしれませんが、慣れていくうちにスラスラ読めるようになります。
少し難しく感じてテンションが下がってしまったかもしれません。
最後はアラビア語最大のシンプルな点をご紹介します!
文法特徴4
be動詞にあたる言葉がいらない!
そうなんです!
アラビア語では「~は」のようなつなぎ言葉がいらないのです!これを等位文と言います。
例えば、「私は日本人です」と言いたい時は「أنا ياباني(私 日本人)」で良いということです!
英語だと主語によってbe動詞が「am」「are」「is」などに変化して結構大変ですよね。
しかし、アラビア語ではこのような手間がありません。ただ単語を並べるだけです。
これにより、アラビア語ですぐ文章を組み立てることができます。
「彼 学生」「あなた 優しい」「この本 有名」みたいな感じですね。
英語のbe動詞にあたる言葉がいらないのは、アラビア語の便利な点の1つですね。
発音の似ている点や違い
最後に、アラビア語の発音についてお話していきます。
結論から言うと、アラビア語と英語の発音は結構似ています。
アラビア語の発音は英語の子音プラスαといったようなイメージです。
つまり、英語の子音以外に特殊な音をいくつか覚えなければなりません。
日本語の発音と比較するとなかなか異なっているのではないかと感じます。
今回はどのようなものかイメージを掴んでいただくためにいくつかアラビア語の発音の特徴をご紹介させていただきます。
発音特徴1
子音に超独特な音がある!
アラビア語の子音の大半は英語の音と同じなのですが、中には聞いたことのないような未知な音が混じっています。
例えば、
- えずくように発音する『ع(アイン)』
- 口に食べ物をいっぱい入れたときのように発音する『ص(サード)』や『ط(ター)』
表現の癖が強いですが(笑)、これはよく言われている発音方法なんです。
初めて聞いた時は「何この音!?」ってなるかもしれませんが、このようにイメージして意識するとうまく発音できるかもしれません。
また、「ر(ラー)」ではスペイン語のように巻き舌をします。
発音めっちゃ複雑そう・・
そう思ってしまったかもしれません。
しかし、私達が普段聞く音と異なっているというだけなので、よく聞いて練習をすれば必ずしっかりと発音できるようになります!
さらに、アラビア語の発音はシンプルな点もあります。
それは、英語と違ってアラビア語の文字はいつも同じ発音をするということです。
英語だと「a」という1文字につき何通りもの発音がありますが、アラビア語では「この文字はこう発音する」と決まっています。
つまり、発音の例外が少ないのがアラビア語の発音の簡単な点の1つです。
このように、アラビア語は子音で特殊な音がある一方で、シンプルな特徴もあります。
英語の発音プラスαという感じなので、アラビア語と英語の発音は比較的似ているということもできると思います。
発音特徴2
母音は「ア」「イ」「ウ」だけ!
「ええ!?」って感じですよね。
日本語の母音は「あいうえお」の5つです。また英語の母音はなんと17個もあります。
しかし、アラビア語の母音は「アイウ」の3つだけなんです!
*正確には短母音・長母音や二重母音などありますが、全て同じ音の組み立わせでそれが長いのか短いのかだけです。
こちらもシンプルで助かりますね。
ただアラビア語の母音は複雑な面もあり、それが以下です。
発音特徴3
短母音を表記しない!
これは初めて知った時衝撃でした。
アラビア語は短母音を表記しないのです。
母音には長母音と短母音があります。これは音を伸ばすか伸ばさないかということです。長母音は「アー」短母音は「ア」という違いです。
長母音は『أ(アー)』、『ي(イー)』、『و(ウー)』という文字です。
しかし、アラビア語では短母音は文字として表しません。
短母音を読むために、初心者の方向けに「シャクル」と呼ばれる発音記号がありますが、ネイティブはそれさえもないのです!
え、じゃあどうやって読むの!?
知っていると感覚的に読めちゃうんです!
これは私達が漢字をそのまま読めるのと似ています。というのも、漢字1つとってもいろんな読み方がありますよね。それを問題なくスラスラ読めるのは多くのパターンに触れて慣れているからです。
そもそもなぜ母音を書かないのかと言うと、アラビア語は昔は子音のみで成り立っていた言語だったのです。そのため、母音という概念自体がなかったんです。
短母音は多くの単語に触れ、ある程度パターンがわかってくればスラスラ読めるようになってきます。
頑張りましょう!!
まとめ:アラビア語と英語は発音が少し似て、文法は大きく異なる
アラビア語と英語の言語的な背景や、単語・文法・発音における具体的な違いや特徴をお話しました。
まとめると、以下のようになります。
まとめ
- アラビア語と英語は言語のグループが大きく違う
- アラビア語が語源の英単語が多くある
- アラビア語はVSOの語順をとり、be動詞にあたる言葉がいらない
- 語頭や語尾が変化したり、他の語と繋がったりする
- 発音(特に子音)は、英語の発音プラスα
- アラビア語は短母音が表記されない
アラビア語はメジャーな言語の中では最も難しい言語と言われています。
たしかに、文法は他の言語と比較すると複雑かもしれません。
しかし、文字の数はそんなに多くないですし、シンプルな部分もたくさんあります。
そして何より規則に則った論理的な言語なので、ルールを覚えれば成長が早まります。
話者がいる以上、習得不可能な言語はないです。
ぜひアラビア語に挑戦してみてはいかがでしょうか?
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